下記研修会を公開で行います。会員でない方も興味のある方はご参加ください。
講師:加治初彦先生(東京都千代田区開業)
演題:これからの時代、一般臨床の中で矯正をどう位置づけるか
日時:平成18年10月20日(金)午後7:00~
場所:新宿区歯科医師会館(新宿区大久保1-2-18)
臨床の現場で、ペリオ、エンド、補綴の処置をルーティーンで行っていない開業医はいないだろう。開業医として矯正をいかに臨床の中に組み込んでいくかは、その臨床家の裁量権の問題かもしれない。あるケースの治療結果の品質を向上させる手段として(部分)矯正が、どの程度貢献できるかは、ケースバイケースで非常に巾の広い問題とも言える。しかし喪失歯を何本も持ち、治療後の安定が切実に望まれているケース程、矯正の関わる要素は大きいと思われる。具体的には、それは中等度以上のペリオを持つ患者で全顎的アプローチが必要なケースだろう。このような症例では典型的に、臼歯部歯牙の喪失、側方歯群の近心傾斜、下顎前歯の叢生と挺出、上顎前歯のフレアリングなどを併せ持つ場合が多い。治療としては通常、感染除去をして補綴という流れになるが、補綴前処置としてLOT(限局矯正)を適用することは治療後の安定性と品質向上に貢献することについて疑問の余地がないと思われる。ペリオによる病的歯牙移動の結果、近心傾斜した側方歯、挺出し混雑した下顎前歯、フレアした上顎前歯などに対してのLOT適用は一定のパターンがあり、そのためのスキルはある程度限られている。具体的には①レベリング、②下顎前歯部の3incisor化及び同部圧下、③上顎前歯部舌側移動などが主な要素だろう。この様に治療内容がある程度限局されパターン化されたスキルが存在すること、ペリオと補綴の術者と歯牙移動の術者が一致しているに越したことはないなどのことから、この種のLOTは専門医よりもむしろGPがやるべきだと思われる。更に近年のインプラント治療の普及により、大臼歯部でのインプラント埋入の頻度が高まっている。インプラントは矯正時に信頼性の高い固定源としてそのまま使用できるため、LOTの適用については益々ハードルが低くなっていると言える。今回は一般臨床の治療でLOTが具体的にどのように貢献できるかを、ペリオや補綴との関わりに言及しながら考えていきたい。特にペリオが絡む全顎的アプローチが必要になるケースでは、「まず矯正ありき」という新しい視点を持つことが臨床に新たな展開をもたらすことを強調したい。